2026/02/26 12:27

和食器物語③|焼き物が出来上がるまで

私たちが日々使っている和食器は、どのように作られているのでしょうか。

焼き物の工程を知ることで、釉薬の美しさや絵付けの意味、価格の違いまで理解が深まります。



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■ ① 土づくり|器の個性はここで決まる

clay preparation

すべては土から始まります。 陶器は陶土、磁器は陶石を原料にします。

陶土は粘り気があり、土らしい温かみのある質感が生まれます。 一方、陶石は砕いて粉末にし、水と混ぜて成形するため、白く硬く、緻密な素地になります。

この段階では、不純物を取り除き、水分量を整え、しっかり練り上げます。 練りが不十分だと、焼成時のひび割れや歪みの原因になるため、 地味ですがとても重要な工程です。


▶関連記事: 和食器物語①|陶器と磁器の違いとは?



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■ ② 成形|器の形を作る

土が整ったら、次は成形です。 成形とは、器の用途やデザインに応じて形をつくる工程のこと。

現代の和食器づくりで主流となる方法は、大きく分けて次の3つです。


◆ ろくろ成形

wheel throwing

ろくろ成形は、回転するろくろの上で土を引き上げながら形を整える方法です。

手の力加減や水の量によって微妙な揺らぎが生まれ、同じ形でも一つひとつ表情が変わります。 茶碗、湯呑、鉢など、丸みのある器によく使われる代表的な成形方法です。


◆ たたら成形

slab building tatara

たたら成形は、板状に伸ばした土(たたら板)を使って器を作る方法です。

角皿や変形皿など、直線や面を活かしたデザインに向いており、現代的な意匠の器にも多く使われています。 型に沿わせたり、板を組み合わせたりすることで、自由度の高い形を作ることができます。


◆ 型成形(かたせいけい)

mold forming

型成形は、石膏型などを使って形をつくる方法です。
土を型に押し当てて成形する方法と、泥状にした土を型に流し込む鋳込み成形があります。


Slip Casting

形の再現性が高く、安定した品質を保ちやすいため、 量産される磁器やシリーズ商品によく用いられます。 複雑な形状や取っ手のある器など、手作業では難しい形にも対応できるのが特徴です。



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■ ③ 乾燥|ゆっくりと水分を抜く

drying pottery

成形が終わった器は、まだ多くの水分を含んでいます。

急激に乾燥させると水分の抜け方に差が生まれ、ひび割れや歪みの原因になります。
そのため、風通しの良い場所で時間をかけてゆっくり乾燥させます。

この段階で削りや高台の仕上げを行うこともあります。
見た目には地味ですが、完成度を左右する大切な時間です。



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■ ④ 素焼き|一度目の焼成

bisque firing

完全に乾燥した器を、約800〜900℃前後で焼く工程が素焼きです。

素焼きの目的は、器に扱いやすい強度を持たせること、そして次の工程で釉薬や顔料が定着しやすい状態をつくることです。

ここではまだ完成ではなく、本焼きに向けた「下準備」の焼成と考えると分かりやすいです。



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■ ⑤ 下絵付け|高温に耐える色で描く

underglaze painting

素焼きが終わった素地に絵を描く工程が下絵付けです。 このあと釉薬をかけて本焼き(約1200〜1300℃)を行うため、高温に耐えられる顔料を使います。

代表的なのは染付の青色です。 コバルトを主成分とする顔料は高温でも色が安定しやすく、磁器の本焼きにも向いています。 緑(銅系)、黄(鉄系)なども、よく下絵として用いられます。

下絵は、のちに釉薬の下へ閉じ込められるため、表面から触れても剥がれにくいのが特徴です。 日常使いに向く理由の一つでもあります。



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■ ⑥ 釉薬掛け|器を守り、表情をつくる

glazing process

釉薬は、焼成するとガラス質になる原料です。 素焼きした器に釉薬をかけ、高温で焼くことで表面が溶けて固まり、器は水を通しにくくなります。

このガラス質の層が、器を水分や汚れから守ると同時に、色や質感、光沢を生み出します。
透明釉、マット釉、鉄釉など、釉薬の種類によって器の印象は大きく変わります。



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■ ⑦ 本焼き|強度と仕上がりが完成する

high firing kiln

本焼きは、器を完成へ近づける最も重要な焼成です。 陶器は約1200℃前後、磁器は1300℃以上で焼き上げます。

この工程で素地は硬くなり、釉薬は溶けてガラス質となり、器の表面を覆います。 下絵付けをしている場合は、透明な釉薬の下に絵柄が固定され、保護される状態になります。

焼成の温度や火の当たり方によって、釉薬の表情や発色は変化します。 同じ釉薬でも、焼き上がりに個性が出るのはこのためです。



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■ ⑧ 上絵付け|低温で鮮やかな色をのせる

overglaze painting

上絵付けは、本焼きが終わった器の表面に絵を描く技法です。
すでに釉薬でガラス質化した表面の上に、絵の具をのせていきます。

赤や金、鮮やかな多色表現は、この上絵付けで施されることが多くあります。
赤の顔料は高温で発色が変化しやすいため、本焼き後に低温で焼き付ける上絵技法が使われます。 金彩や銀彩も同様に、高温では変色や劣化の恐れがあるため上絵として施されます。

上絵は釉薬の上にのせて定着させる技法のため、下絵に比べると装飾層は繊細です。 強い水圧や高温乾燥、強アルカリ性洗剤を使用する食洗機では、 摩耗や剥離の原因になることがあります。

上絵付けや金彩・銀彩が施されている器は、 できるだけ手洗いをおすすめいたします。


▶関連記事: 和食器物語②|電子レンジ・食洗機は使える?



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■ ⑨ 上絵焼成|低温で仕上げる

low temperature overglaze firing

上絵付けを行った場合は、約700〜900℃程度の低温で再焼成します。 この工程によって、上絵の顔料が定着します。

上絵付けを行わない器の場合、この工程はありません。



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■ ⑩ 完成|幾度もの焼成を経て生まれる

finished pottery

下絵のみの器は二度焼き、上絵を施す器は三度焼き以上になることもあります。 一つの器の中に、下絵と上絵が組み合わさっていることも珍しくありません。

工程と焼成を重ねて生まれるからこそ、和食器には奥深さがあります。



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■ まとめ|工程を知ると、器の見え方が変わる

和食器は、土を選ぶところから始まり、成形、乾燥、素焼き、下絵付け、釉薬掛け、本焼き、 そして必要に応じて上絵付け低温焼成を経て完成します。

一つの器は、いくつもの工程と温度変化を乗り越えて生まれています。 工程を知ることで、色の違いや装飾の意味、価格差の理由まで、すべてが一本の線でつながります。

表面の揺らぎや、釉薬の濃淡、貫入(釉薬の表面に入る細かなヒビ模様)も、
偶然ではなく焼成と素材が生み出した表情です。

器は単なる道具ではなく、土と火と人の手が重なって完成する工芸品です。 工程を理解したうえで器を選ぶと、見え方も、扱い方も、そして愛着も変わってきます。


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